ミャンマーでは、なぜ、これほど激しいデモが起きているのでしょうか。そこには、軍事政権下で長年苦しんできた市民の思いと、今回のデモの中核となっている僧侶たちの“心の傷”がありました。
1988年、ミャンマー全土で民主化を求める民衆の大規模なデモが起きました。デモの鎮圧に動いたのは国軍。同時にクーデターを決行し、社会主義体制は崩壊したものの、代わりに軍事政権が誕生しました。この時、数千人の市民が虐殺されたといわれています。民主化は遠く、“深い傷”だけが国民に残されました。
28日、都内にあるミャンマー大使館前で抗議をするマ・キン・キン・ソーさん。彼女は91年、軍の迫害から逃れるために日本に亡命しました。
「軍事政権が変わらなければ、(迫害は)ずっと続くから」(マ・キン・キン・ソーさん)
国民は日々、食べるものにさえ困る状況の中、軍事政権の幹部だけが豊かに暮らす状況に怒りが募ります。
「国民、子供たちは苦しんでいて、ご飯も食べられず学校にも行けないのに、(軍事政権幹部は)国の財産を使っているのは、私たちには考えられないこと」(マ・キン・キン・ソーさん)
そんな中、ミャンマー政府は先月15日、石油や天然ガスなどの燃料価格を大幅に引き上げました。
「世界的な石油高の中で、ミャンマー政府は補助価格で配給していましたが、もうこれでは補助価格での配給は続けられないと。20年間、ずっと大きな財政赤字を抱えていますので、これ以上かかえきれないと」(アジア経済研究所岡本郁子氏)
生活の足であるバスにさえ乗れない市民は、8月下旬頃から徐々に抗議を始めました。そして、ついに僧侶が立ち上がったのです。
「ミャンマーの軍事政権は、(銃撃を)やるからすごく悪い」(ミャンマー人僧侶)
東京新宿区のミャンマー料理店。ミャンマー人の僧侶が静かに語ってくれました。敬虔な仏教徒が多いミャンマーでは僧侶は特別な存在です。抗議活動に参加した僧侶への軍による暴力が、大規模デモへと発展。軍による鎮圧の事態を招きました。
「(デモは)ずっとずっとやる。こういう政治が終わるまでやる」(ミャンマー人僧侶)
この事態に国際社会は非難を強めるものの、足並みは揃っていません。
「中国に関してはミャンマーに非常に大きな経済権益を持っている。最近は天然ガスの大きな契約を結んでいる。欧米諸国に関しては、ミャンマーに経済権益がないからこそ、踏み込んだ対応ができるといった側面もあるかと思う」(アジア経済研究所岡本郁子氏)
いたるところで武装した兵士が警戒に当たるミャンマー。国民生活への圧迫はさらに続きます。(28日23:35)
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