景気が回復する中、今年の就職戦線は「超売り手市場」と言われています。大手企業の間では、パートや契約社員を正社員に切り替える動きも広がっています。しかし、こうした流れにうまく乗り切れないのが、「就職氷河期世代」の若者たちです。
都内に住む酒井徳子さん(35)。大学を卒業して以来、正社員として採用されるチャンスに恵まれないまま13年が経ちました。
「もろに(就職)氷河期に入りました」(酒井徳子さん)
アルバイトや派遣の仕事は楽しかったものの、年齢とともに焦りを感じるようになったと言います。
「すぐに収入がないと、家賃も払っていけなくなっちゃうから、どうしても(採用が)決まりやすいアルバイトとかの方にいっちゃって」(酒井徳子さん)
30歳の時、頼れる人を失います。2人きりで生活してきた父親が亡くなったのです。当時の仕事は弁当屋でのアルバイト。1日12時間働いても、収入の半分は月7万円あまりの家賃に消えていきました。
「四十九日と一周忌と三回忌と続いて、多少あった蓄えも全部でちゃうんで」(酒井徳子さん)
将来に不安を感じ、安定した収入を得たいとの思いがいっそう強まります。
「次はもう絶対、正社員だと思って」(酒井徳子さん)
景気回復を受けて、減り続けていた正社員の数は去年から増加に転じ、雇用環境には明るい兆しが見えてきています。今年は新卒の採用も「超売り手市場」です。
「若い力をどんどん欲しいなと思って。採れれば採れるだけ」(企業の採用担当者)
しかし、30代から正社員を目指すのは、決して楽観的な状況ではありません。
こちらの人材派遣会社では、30歳前後から正社員を目指す人たちを支援するプログラムを開始しました。
参加者の平均年齢は30.2歳。就職氷河期に大学を卒業し、正社員経験のない女性が大半ですが、不思議と共通する傾向があると言います。
「正社員と同じ働きをしていても評価されないとか、ボーナスが出ないとか、(不満)を皆さん口々におっしゃるんですね。具体的にどういう事をしたいとか、そこが定まっていらっしゃらない」(インテリジェンス瀧幸子さん)
給料や待遇の格差を身にしみて感じ、正社員を希望する人たち。しかし、正社員になれば責任も重くなることを理解してもらおうとしています。
あの酒井さんも去年末、研修に参加しました。その後、派遣先で仕事ぶりを評価され、保険代理店に正社員として、入社が決まりました。
「昇給があったり、目に見える評価にもつなげていきたいと」(酒井徳子さん)
しかし、正社員になれば本当に安泰なのか。そうした神話は、既に崩れ去っていると感じている人も少なくありません。
昨年から就職活動していた32歳の女性は、1月から働き始めた会社で、来月、正社員になれることが決まりました。ようやく念願が叶ったという喜びの一方で、新たな不安にかられています。
「もし5年後、会社がつぶれましたという状況になってしまった場合に、私の年齢からすると、やり直しは今よりももっとさらに大変なんですよね。大手で派遣をしている方が安泰なんじゃないかなって」(女性)
正社員という言葉に強い憧れを抱いてきた「就職氷河期世代」の若者たち。しかし今、正社員になることが自分にとって本当に幸せなのか、模索が続きます。(07日15:14)
[日语学习]经济:「就職氷河期世代」の若者たち、その現実
分享